Ball'n'Chain

雑記

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

透明な火照り

北杜夫の『牧神の午後』を読んだ。六編の短編小説のアンソロジー。でもその中の「病気についての童話」は四つの掌編から成っているので、全部で九編の小説が含まれていると言っていい。まず旧仮名遣いが美しいのもさることながら、作品全体を通して何かこう…

牧神に誘われて

宝が池公園に行ってきた。すごく近いのだけれど、今の家に住んでから二年くらいしか経っていないので、今まで行く機会がなかった。何となく考えが鬱ループになって、人間臭さが嫌だけれど人恋しい、というめんどくさい気持ちになってきたので、自然の霊気を…

一つの求道記

こないだ下鴨の古本市で買った本を読んだ。ウィリアム・バロウズの『ジャンキー』。麻薬中毒者であることで有名な彼の、自伝的小説であり、処女作、らしい。面白くて一気に読めた。ジャンキーがどういう行動をするか、ジャンキーになるとどういう症状が出る…

首筋の静寂

黄色い日差しが肌に照りつける。爪先を見つめながらとぼとぼと歩いている。花弁を閉じた槿の花がいくつも落ちている中に、ひっくり返ったセミが白い腹を見せている。生命が生い茂っている。死者たちがぼんやりと陽炎のように立ち上る。 三年前に、主治医が突…

孤独の共鳴

少年がとつとつと傘の先で道路を突きながら帰っていく。いつ降りだしてもおかしくないような曇り空。蒸し暑い空気をぬっと押しのけてバスがやってくる。久しぶりにバスで四条まで行って買い物をしてきた。サンダルとTシャツ。今まで履いていたサンダルはカビ…