Ball'n'Chain

雑記

牧神に誘われて

 宝が池公園に行ってきた。すごく近いのだけれど、今の家に住んでから二年くらいしか経っていないので、今まで行く機会がなかった。何となく考えが鬱ループになって、人間臭さが嫌だけれど人恋しい、というめんどくさい気持ちになってきたので、自然の霊気を吸い込んでみようと思ったのだ。交通量の多い国際会館側の大きな道を曲がり、ホテルの横をしばらく進む。周りは既にうっそうとした緑に覆われているが、公園の入り口にはなかなかたどり着かない。ここは通らないほうがいいだろうと思われるようなやばそうなトンネルの手前に、小さな自転車止めがあった。久しぶりの砂利道をしばらく進んでいくと、池の全貌が見えてくる。

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 結構でかい。カモがのどかに泳いでいる。貸しボートもある。池の周囲はジョギングコースになっていて、本気走りの若者から散歩中の家族連れ、健康づくりの老人までいろいろな人が行きかっていた。入口に自転車止めはあったが、自転車で入っても特にとがめられることはない(私もそれを見越して、自転車で入った)。でも基本砂利が多いので、ママチャリには向かない。本格的なカメラを構えて写真を撮っている人がいたので、被写体は何だろうと思って覗いてみたら、シカがいた。野生らしい。

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 見た感じ少なくとも井の頭公園の池よりは大きいと思うんだけど、周囲を回ってみたら案外簡単に一周できる。京都では結構こういうことがよく起こる。距離感がつかめないのだ。周りに気を取られているうちに足が進んでいるのかもしれない。それとも私が北海道の山から下りてきた人間だから、公園はでかいものと勝手に脳が認識しているのかもしれない。いずれにせよ、悩みを持ち出す暇もなくあっという間に見終わってしまった。暑い日だったけど木陰は涼しいし、マイナスイオンがどばどば放出されている感じがして、いい気分転換になった。公園を出た道をぶらぶら歩いている途中、車道に停めてある車の中で男女がまぐわっていたのには引いたが。軽でやるなよ。

 桑田佳祐の「がらくた」ばかり聴いてる。十歳の時からサザンのファンだから、桑田さんは二十年以上聴き続けていることになる。今回も期待を裏切らない。どれもいいけど、一番好きなのは「簪/かんざし」かな。イントロの不協和音で何かが交錯する。何だろうね。都会の雑踏の中に不自然に落ちた果実であるかもしれないし、目の端をかすめた鳥の影であるかもしれないし、出会うはずのなかった男女であるかもしれない。とにかく、目の前に大きなクロスが見えた。歌詞にいつものようなストーリー性はないけれど、ばらばらとちりばめられた言葉がまた想念を広げてゆく。あと、「大河の一滴」もいい。これは缶コーヒーのCMのタイアップ曲。どろどろとした人間の情念のようなものが、テンポの速いリズムに乗せられて気持ちよく昇華されていく。珠玉の一枚。